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オンラインカジノと比較して見えてくる海外FXの違法性の問題

海外FX業者のほとんどは、日本国内の「金融商品取引法」に基づく登録をしていない「無登録業者」である。

「無登録業者」であることから、海外FXに対しては「違法性」をめぐる疑問や議論が絶えることがない。

日本の金融庁も、このような注意喚起を発布することによって、FXに興味を持った日本国内の投資家に「海外FXの違法性」を周知させようとしている現状がある。

では「無登録の海外FXの業者を通して日本人投資家がFX投資をするのは違法なのか?」というと、これに対しての回答は「違法性はない」である。海外FXに投資する日本人投資家に違法性が発生することはない。

だが「無登録の海外FX業者には違法性があるのか?」という質問に対しての答えは「違法性がある」というものになる。

海外FXが抱えている違法性の核心を理解するためには、「オンラインカジノの違法性」を比較して参照するとわかりやすい。

そこで今回は、海外FXの違法性とオンラインカジノの違法性の違いを比較しながら、海外FXの違法性について切り込んでいけたら、と考えている次第だ。

海外FXとオンラインカジノの違法性は真逆の関係にある

海外FXとオンラインカジノの違法性は真逆の関係にある

海外FXとオンラインカジノの「海外業者」と「国内利用者」のそれぞれに発生する「違法性」は、ちょうど真逆の関係にある。

海外FXの場合は、「無登録の海外FXの業者」が日本国内の投資家に勧誘を行うことが違法とされるが、「日本国内から海外FXを利用する投資家」は違法性を問われることがない。

一方、オンラインカジノの場合は、「海外業者のオンラインカジノ業者」を厳密に違法にすることができないが、「海外業者のオンラインカジノを日本国内で遊ぶギャンブラー」には遊ぶこと自体に違法性が発生する。

このような対照的な違法性が発生する背景を理解するためには、海外FXには「金融商品取引法」が適応されており、オンラインカジノには「賭博法」が適応されることをおさえておく必要があるだろう。

また、これはあくまで「それぞれの法とのかかわり」の話であり、「摘発されるかどうか」はまた別の話である。

実際、無登録の海外FX業者による国内投資家に対する勧誘は違法であるのだが、海外FX業者が勧誘によって発生した違法性によって摘発され裁かれるという事例はまずない。

現在のところ、日本国内に拠点を持っている詐欺グループが「海外FX」を利用した詐欺で摘発されているケースなどが散見されるだけであり、これは海外FX業者の犯罪ではなく、国内詐欺グループの犯罪である。

「摘発が困難である」という点においては「海外FX業者」と「海外オンラインカジノ業者」は共通点を持っている、ということができる。

海外FX業者は合法的な運営をすることが可能である

海外FX業者は「日本国内の金融商品取引法に則った合法的な運営」が可能であるのに対して、一方のオンラインカジノは「日本国内の賭博法に則った合法的な運営」は原則的に不可能だ。

海外FX業者の違法性は「無登録」であることに尽きていて、「合法的な運営が可能であるからこそ発生する違法性」であるということが指摘できる。

実際、海外FX業者のなかには、日本国の法である「金融商品取引法」に則って、登録をしたうえでFXの投資を勧誘している、という業者も存在している。

こういった「合法的に国内で運営」という選択肢はオンラインカジノの場合は絶対に発生しない。ここでも「海外FX」と「オンラインカジノ」は真逆の関係にあると指摘することができる。

海外のオンラインカジノ業者は海外でしか運営できない

海外のオンラインカジノ業者を違法で問うことができないのはあくまでそれが「海外を拠点に置いている」からであり、「日本国外でしか運営ができない」からでもある。

オンラインカジノ業者は「日本国内に拠点を置いた」段階で一発アウトだし、すぐに摘発されるだろう。

海外FX業者のように「日本国内の法律に則っての合法的な運営」という選択肢がそもそも存在しないところに、海外FX業者とオンラインカジノ業界の最大の違いがある。

その事情を理解するには、日本の「賭博法」を参照する必要があるだろう。オンラインカジノもその対象となる、日本の賭博法とは、以下のような条文を持っている。

第185条
賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

第186条

1,常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。
2,賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

賭博法第186条第二項は「賭博場開張等図利」と呼ばれている、いわば「胴元を摘発するための法」である。

この「賭博場開張等図利」は、現在は「日本国内の胴元」にしか適応できないという「欠陥」を抱えている。

そのため、海外に拠点を置く「海外胴元」であるオンラインカジノは「海外胴元である」という理由のみで、日本国内の「賭博法」で裁くことができないという「グレーゾーン」に身を置くことができている。

日本国の本音としては、「オンラインカジノも賭博法で違法にして摘発したい」といったところだろうが、「法律の性格上、手を出すことができない」というのが現状である。

オンラインカジノ業界はそれを知っているので、「運営が違法にならない絶対に安全な立場」を死守したうえで日本人プレイヤーの獲得をしているというワケだ。

「違法であることを覚悟したうえで、それでも無登録で日本人投資家を勧誘する海外FX業者」とオンラインカジノ業者の違いは、ここに最大に表れているということができるだろう。

海外FX業者が無登録のまま勧誘をする理由

海外FX業者が「違法」であることを知りながら、それでも無登録のまま日本人投資家を勧誘するのは、「日本国内の取引条件」が適応されて、活動が制限されるのを避けるためである。

海外FXの最大の魅力は「高いレバレッジでの取引ができる」というところにある。

海外FXのレバレッジは100倍から最大では1000倍程度まで引き上げられていることもある。一方で、国内FXのレバレッジは最大で25倍までと規定されている。

海外FX業者が「登録をする」ということは、この海外FX業者にとって最大の魅力である「高いレバレッジでの取引」という要素をドブに捨て去ることと同義である。

無登録の海外FX業者は、「違法性」と「高レバレッジ」を天秤にかけて「高レバレッジ」を選択した業者である、とひとまず定義することができるだろう。

そして、日本国内の投資家にとっても、この「高レバレッジでの取引」は、合法的な運営をしている国内FXに比べて、破壊的なまでに魅力的だ。

そこで、「違法であることを知りながらの無登録海外FX業者からの勧誘」と「日本人投資家の海外FXの利用」という共犯関係が成立することになる。

だが、冒頭でも触れたように「日本人投資家の海外FX業者の利用」には違法性が発生しない。

この背景を理解するためにも、「賭博法」を軸にオンラインカジノとの比較をすると、要点がつかみやすくなるだろう。

国内利用者の扱いが「被害者」と「犯罪者」に分かれる

海外FX業者を利用する日本人投資家と、オンラインカジノを遊ぶ日本人プレイヤーは、法的にはそれぞれ「被害者」と「犯罪者」という扱いになる。

先ほど引用した賭博法が適応される日本国内のギャンブラーは「国が認めたギャンブル」以外のギャンブルを国内で遊んだ場合、「賭博行為をした」とみなされて「犯罪者」になる。

だが、「金融商品取引法」は、「賭博法」と違って「利用者に対する罰則」が存在していない。

「金融商品取引法」においては「違法の海外FX業者を利用する日本人投資家」は、「犯罪に巻き込まれた被害者」という立場に置かれることになるのだ。

さきほど「共犯関係」という言葉を使ったが、それは「無登録の海外FX業者と日本国内投資家」が「加害者と被害者」の関係にありながら、双方が「win-win」ともいえる関係になっており、そこには「加害と被害」という実態がないことを意味している。

「加害者と被害者」という関係性は、あくまで「金融商品取引法」に応じた関係性であり「名ばかり」のものでしかない。

「無登録の海外FX業者と日本国内投資家」は、むしろ進んでその関係性に身を投じているのだし、取引をすること自体に「被害者意識」を感じている日本人投資家など一人もいない、というのが現状だろう。

被害者という立場で取引ができる日本人投資家

「みずからの欲望のために違法と知りつつオンラインカジノで遊ぶ犯罪者」であるオンラインカジノの利用者と、「被害者という立場で取引ができる」日本人投資家の「どちらがより倫理的か」は問わないにしても、ここに明らかな「対照性」と「真逆」があることは否定できないだろう。

金融庁による注意勧告があくまで「被害にあわないように」というテイをとらなければならないのも、この「法的にねじれた加害-被害関係」に配慮しているためである。

警視庁による「オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!」が、「日本国内のギャンブラー」を明確に犯罪者として扱っていることと読み比べれば、この対照性がよりよく理解できる。

金融庁の注意喚起の末尾には「無登録業者との取引の勧誘を受けた場合には、金融庁金融サービス利用者相談室に情報提供をお願いします」というお願いが書かれているが、「共犯関係」にある日本人投資家が金融庁に情報を提供する、ということはまずないのではないだろうか。

「加害者と被害者の共犯関係」こそが「無登録の海外FX業者をめぐる違法性」の核心にあるのである。

無登録の海外FX業者の違法性まとめ

無登録の海外FX業者の違法性まとめ
  • 海外FX業者には合法での国内運営という選択肢もある
  • 無登録の海外FX業者は高レバレッジでの高額取引のために積極的に違法を選んでいる
  • 無登録海外FX業者と日本人投資家は共犯関係を築いている

オンラインカジノとの比較から見えてくる「無登録の海外FX業者の違法性」の問題をまとめるなら、以上のようになるだろう。

あくまで「法的な話」でしかないが、行為自体が「違法」とみなされるオンラインカジノで遊ぶことに比べて、「被害者」として利用できる海外FXの投資は「安全圏での行為」であるということができる。

また、あくまで「金融商品取引法」にひっかかっているというだけであり、「海外に拠点を置いている海外FX業者」も、「海外で運営して入れば安全なオンラインカジノ業者」と同様に「摘発は恐れてはいない」のではないだろうか。

最後になるが、今回はあくまで「無登録であること自体の違法性」に焦点をあてるために、「海外FX業者による詐欺被害」という問題については「別問題である」と判断して触れなかった。

だが、無登録の海外FX業者の一部には悪質な詐欺業者がいるのも確かであり、そういった別種の犯罪についてはもちろん忘れてはならないし、日本人投資家も注意が必要となるだろう。