「日本にもカジノが開設されるかもしれない」ということで、IR(総合型リゾート)は持続的な関心を集めている。
特に大阪でのIRカジノの「実現の見込み」が垣間見えてきたことで、カジノに対する興味関心はギャンブラーだけにとどまらず、様々なジャンルの日本人へと広がっている。
我々のような「投資家」にとってもカジノというのは常に興味の対象として視界の端にチラチラと見え続けている存在であり、「日本のIRカジノは投資先として魅力的か?」という大きな問いは、投資家にとって、今後はある程度の重要性を帯びてくるだろう。
だが、「IRのカジノは投資先として魅力的なのか?」という問いについては、ギャンブラーと投資家の間では、根本的な認識の違いがあると感じざるをえない。
今回は、投資家にとっての「投資先としての日本のカジノの魅力」について「市場規模の予想」を基本として考察しながら、投資に関するこの「根本的な認識の違い」についても触れていきたいと考えている。
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投資家はカジノ周辺の経済活動にだけ注目している
投資家にとって日本のIRカジノが魅力的かどうかについては、カジノそれ自体ではなくて、「カジノをめぐる経済活動がどのように展開するか」というポイントからしか判断しない。
投資家は「カジノで遊ぶこと」にはほとんど興味がなく、「カジノにどのような利権がついており、どの企業が儲かりそうなのか」だとか、「人が集まることで、どの企業の金が変動がありそうなのか」というポイントだけに注目している。
ギャンブラーから「カジノは投資先として魅力的なのか?」という問いが出る場合、ギャンブラーは「カジノに自分自身の資産を投資すること」を考えてしまう傾向があるが、これは大きな誤りであると言わざるをえない。
そもそも私は「ギャンブルを投資として考える」というようなすり替えの思考に対しては、投資家として一貫して批判を続けたいと考えているし、「ギャンブルは投資ではない」という明らかな事実は口を酸っぱくして何度でも言いたいと考えている。
「日本のIRカジノは投資先として魅力的か?」という問いは、投資家にとっては、あくまで「市場規模の予測」から見出される「株価の変動」という観点からのみ考えなければならない問題だ。
投資的に魅力がある企業の一部はすでに明らかになっている
日本のIRカジノをめぐる株価の変動の予測として、投資的な価値が変動する可能性がある企業の一部は、すでに明らかになっている。
大阪が誘致を目指しているIRが「最終調整」に入ったことで、カジノをめぐる経済活動に直接関与する企業が一覧としてニュースになっているためだ。
投資家としてはこれらの企業の銘柄を一つ一つチェックし、これらの銘柄の株価が今後どのような変動をするかを判断する必要がある。
ちなみに、日本のIRカジノと関わる銘柄として、すでに明らかになっているのは以下の企業である。
- オリックス
- コナミ
- セガサミー
- 日本金銭機械
- オーイズミ
- ユニバーサルエンタ
- 西日本旅客鉄道
- 東海旅客鉄道
- 南海電気鉄道
- 京阪ホールディング
これらの企業の株価をチェックすることが、ひとまずは「日本のIRカジノは投資先として魅力的か?」という問いを考えるための方法ということになる。
カジノが完成するまでに価値が変動する可能性がある企業
まずは、カジノが完成して指導するまでに価値が変動する可能性がある企業の株については、カジノが完成する前にある程度手に入れておくのがいいのではないか、と考えられる。
列記した関連企業のなかでは「コナミ」「セガサミー」「日本金銭機械」「オーイズミ」「ユニバーサルエンタ」などの企業は、カジノの完成前に手に入れておきたい銘柄である。
なぜかというと、これらの銘柄は「カジノに配置されるゲーム」の製造に関わっているからである。
日本のIRカジノが最終調整に入ったということは、今後これらの遊戯機器の具体的な発注と製作が活性化することが予想される。
すでに捻出された予算のなかから関連企業に対して資金が支払われている可能性もあり、今から銘柄を手に入れるとなると「手遅れ」かもしれない。
だが、これらの企業の生産活動と経済活動が、これからカジノをめぐって活性化することだけは確定していると考えて、まず間違いないだろう。
すでにこれらの銘柄を持っている投資家であるならば、「カジノ完成」までの限られたスパンのなかで株価の変動をしっかりチェックしつつ、売り時を見計らって株取引をすることで「投資先としての価値」を適切に見極めることができた、ということになるだろう。
カジノ完成後は、これらの企業の生産活動が落ち着くことが予想されるため、「価値の発生」のタイミングをしっかり見抜く、投資家としてのセンスが問われる。
カジノ完成後に価値が変動する可能性がある企業
一方、カジノ完成後に「日本のカジノにどれくらいの人が集まるのか」によって価値が変動する銘柄の「投資先としての価値」について考えていきたい。
カジノ完成後に価値変動が期待できるのは、上記の一覧のなかでは「西日本旅客鉄道」「東海旅客鉄道」「南海電気鉄道」「京阪ホールディング」などの、交通やレジャー施設にかかわる企業である。
これらの企業の株価がどのように変動するかは、「日本のIRカジノにどのくらいの人が集まり、どのくらいの金を使用するか」という消費活動による経済活動に左右されることが予測される。
日本のIRカジノが大ゴケし、閑古鳥がなき、客が集まらなかった場合、これらの銘柄の価値が大幅に上昇することはないが、活況を迎えた場合は「投資先としての魅力」が発生する可能性が十分にある。
となると、その予測のためには、大阪府の発表などを参考にしながら「どの程度の来場見込みがあるか」を見ていく必要があるだろう。
大阪のIRの皮算用的な年間売り上げ見込みは5200億円
大阪のIRカジノに関しては、年間売り上げの見込みとして「5200億円」という予測を立てているが、これはあくまで「予測」でしかないし、私見ではあるが、現実と乖離した「皮算用」であるという印象がどうしてもぬぐえない。
大阪IRカジノに関しては「建築物の大きさ」と「営業時間」、また「入場料」などを考慮したうえでの「来場者数」と、そこから導き出される経済的な予測には、大きな疑問が残る。
まず「建築物の大きさ」だが、大阪のカジノは大体「大型パチンコ店」が2店舗入るくらいの面積しかないことが明らかになっている。
この店舗にギュウギュウに客をつめて「24時間営業」をすることを想定して大阪は売り上げの見込みを出しているのだが、「24時間つねに満員のカジノ」という予測はあまりにも楽観的ではないか、というのが私の考えだ。
また、カジノの入場料は「ひとり6000円」である。この入場料で大阪が目標とする売り上げを出すためには、1日に3万人程度の来客が必要と言われている。
言わずもがな、現在の日本は物価の高騰と厳しい税の徴収などで、全国民が困窮に喘いでいる状況にある。
この状況で「1日3万人がカジノに来客し、24時間ずっと遊戯で遊び続ける」というヴィジョンを描くことは極めて難しいと言わざるをえない。卵を買うことやガソリン代にすら苦しんでいる国民に、カジノに足を運ぶ余裕はおそらくないだろう。
海外のカジノの市場規模から価値を考える
日本のIRカジノに投資先としての魅力を考えていくためには、海外のカジノの市場規模の現状なども参考資料に取り入れて考えるのもアリである。
結論から言うと、カジノ業界は世界的に見ても「赤字」が続いている状態にある、ということは考えなければならないだろう。
カジノ業界全体でもっとも多い売り上げを出しているカジノ企業のは「MGMリゾーツ・インターナショナル」だが、年間で1兆3000億円もの売り上げを上げているにも関わらず、「2300億円の赤字」が出ているのが近況である。
世界最大のカジノでさえこのような状況である以上、おそらくは施設としてのクオリティやカジノとしての風格などで世界的なカジノに劣ることは明らかな日本のIRカジノが「巡分満帆な黒字経営になる」という呑気な市場予測は、残念ながら難しいのではないだろうか。
先ほど提示した「カジノ完成後に価値が変動する可能性がある銘柄」については、これらの市場規模の予測から見て「やや厳しい」という評価が適切になるのではないかと思われる。
ギャンブルを投資と考えるタイプに支えられる株価
日本のIRカジノが「投資先としての魅力」を手に入れるためには、「ギャンブルを投資だと考えているタイプ」の存在が不可欠である。
私は「ギャンブルを投資としては認めていない」のだが、「日本のIRカジノの投資的な魅力」をあげていくためには、「カジノは投資である」と勘違いしているタイプのギャンブラーと、彼らの軽座右的な破滅が一定数必要であることは否定できない。
なぜなら、「カジノの投資的な魅力」は「来場者数」と「来場した客がどのくらい金を落としたか」によって変動していくものだからだ。
日本のIRカジノに関しては、「ギャンブル依存症」などによる自殺の懸念なども「興味関心」の一つのリアクションとして出ているが、「投資的な魅力」は「ギャンブル依存症」に支えられてしまう、というのが日本のIRカジノの「投資的な現実」だろう。
私も「投資家」であるより先に「人間」であるため、自殺の可能性もあるギャンブル依存症に支えられてまで投資的な価値が高まってほしいとはさすがに考えない。
だから、この観点から見ても「日本のIRカジノには投資的な魅力があるか?」という問いには「魅力がない」と答えるしかないように思われる。
日本のIRカジノの投資先としての魅力まとめ
- 大阪の売り上げ見込みは現実的ではない
- カジノ業界は世界的に赤字傾向にある
- ギャンブル依存症の破滅に支えられた価値しかない
日本のIRカジノの投資的な魅力に関するまとめは以上になる。
投資家の観点からすると、細かい株の取り引きをすれば、ある程度の利益を引き出すことは可能かもしれないが、大幅な利益を手に入れるのは難しいのではないか、という淡々とした予想図が見えてくる。
カジノを誘致しようとしている政治家の「皮算用」は、投資家から見てもかなり杜撰で、悪い意味で楽観的である。
日本のIRカジノについては「誘致」の段階ですでに利権などでの儲けが確定しており、「完成後の売り上げ」のことは正直なところどうでもいいのではないか、という疑いもぬぐえない。
日本のIRカジノ関連企業への投資に対しては、冷静な判断と適切な距離が必要となるだろう。